「照くん、カミってる!~宇曾月家の一族殺人事件~」感想

今回は先日千秋楽を迎えたばかりの「照くん、カミってる!~宇曾月家の一族殺人事件~」の感想ですー。
先に言っておきますが、今からベタ褒めします(笑)

いやー、この舞台、本当に面白かった!
私は元々ミステリー好きなので、恐らく楽しめると思っていたんですが、期待以上の素晴らしさでした。
脚本、演出、共演者、すべてに恵まれていた舞台だと思います。
私がここ5年ぐらいで見た舞台の中では一番好きかもしれません。

そして、私は知念担ながら、なるべく自担に盲目にならないよう日頃から気をつけているのですが、そういうオタク特有のフィルターをはずしても、知念さんは本当に素晴らしい役者だったと思う。
何より最初に言いたいのが、「これ、本当に初舞台ですか??」ってことでして。
声量もかなり求められる役だし、何せ探偵役だから台詞量も膨大だし、後述しますがやることめっちゃ多いし。
とにかくストリートプレイ初の人にしたら、レベルが高い役だったと思うんですよ。
だから、この舞台が始まる前に知念さんが色んな媒体で不安を吐露していた気持ちが、今になって痛いほどわかります。
そりゃー、舞台の話を振られると、表情が曇る訳ですわ。

でも、知念君の凄いところは、こちらの予想を遥かに越えるパフォーマンスを見せてくれるところ。
恐らく想像以上の努力と鍛練を重ねてきたんでしょうね。
幕が開き、「ごちゃごちゃうるせえ!」という怒気の入った第一声から、役としての熱量がすごく入っておりまして、そこに立っているのはJUMPの知念侑李ではなく、天才的頭脳と面倒くさがりを兼ね揃えた能神照という人物でした。

私もこれまでジャニーズ以外にも沢山の舞台を見てきましたが、舞台慣れしていない人って時々舞台中に素の自分が出てきてしまう事があるんですよ。
でも知念君にはそれを感じませんでした。
立ち居振る舞いや空気感など、舞台上では照君が確かに生きていました。
(元々知念さんは、役の空気を作るのに長けた人ですが)
舞台ならではの発声法もしっかりこなせていましたし、これだけ自然とそのキャラクターに演じられるなんて、知念さんの能力の高さを改めて感じました。

でも、一旦幕が下りてカーテンコールを迎えると、面倒くさがりの照君から、一気にいつものほわほわした知念さんに戻るんですよね。そのスイッチが切れて、知念さんへと雰囲気が一変する瞬間も好きで、まんまとその変化に惹きこまれました。

そんな訳で、大分前置きが長くなりましたが、ここからはネタバレも多少含めつつ、簡単に箇条書きで感想を書いていきます。

■「そこそこ本格ミステリ」らしさ

ミステリ作家の兄の依頼で、嫌々ながら天狩村にやってきた大学生の能神照。
そこで照を待っていたのは次期当主に指名された宇曾月八菜と一癖も二癖もありそうな宇曾月一族の面々。
不穏な空気が漂う中、ついに悲劇が起きる……。
(※舞台フライヤーより)

あらすじだけ見ると、一見ミステリー要素が強そうに見えますが、「そこそこ本格ミステリ」というサブタイトルがついているように、謎解き要素とコメディ要素を上手く半々ずつ取り入れたエンタメ作品になっています。
パンフで「演劇を初めて見る人達にも、何も考えず楽しめる作品を提供したい」と河原さんがおっしゃっていましたが、その意味がよくわかる作品でしたね。

もちろんミステリーらしく殺人事件は起きますし、一族を取り巻く数々の謎が出てきます。
それを天才的頭脳をもつ照君が鮮やかに解決していきますが、山場となる、八菜さんの出生に関する真相などは結構頭を働かせて聞きましたね。

ですが、一見すると重たくなりそうなテーマに、ミステリーではありえないコメディ要素を入れる事で、楽しく見られるようになっているんですよ。
例えば、被害者を幽霊として復活させたり、道しるべとして劇中で使っていたフリップが落ちてたり。
先ほども書きましたが、ミステリーとコメディが上手く融合したエンタメ作品として仕上がっていたと思います。

それから、演出的には所々にTVっぽさも感じました。これも舞台の演出としては斬新ですよね。
例えば、最初のキャラクター紹介では音楽に合わせて挨拶したり(※ちなみに、これはよく2.5次元で使われる手法だなーと感じました。)
相続関係のややこしい話の時は、家系図やフリップを使いつつ、簡単にかみ砕いて説明してくれたり。
ただでさえ話がややこしくなりがちなミステリーを、舞台上だけでやることって本当に難しいことだと思うんですが、河原さんの演出のおかげで、初見の人にも優しい作りとなっていました。

個人的に好きだった演出は、一幕・二幕間の場面転換時にそれぞれ一回ずつアイキャッチが入っているところですね。
長時間の舞台でありがちな、話が長くて集中力が切れそうになる空気感を一気に引き締める効果が出せてたと思いますし、何より知念君がとっても可愛かった!
基本的には照君がカッコよく決めポーズを取るんですが、一回だけノリノリで体を揺らしているシーンがありまして、そこは完全に照君ではなく、JUMPの知念ちゃんになっていて、とっても微笑ましかったです。

■魅力的な登場人物
登場人物も個性豊かなんですよねー。

まず主役となる照君が想像以上の面倒くさがり屋で。
とにかく開幕早々から村から帰りたがるし、何か起きる度に「面倒くさい」と言うし、床をごろごろ転がるし、
最終的には「ウルトラスーパーメガマックス鬼面倒くさい」まで出てきて、ブリッジしてましたね笑(←そちらの方が面倒くさそうと思った)。
確かに、面倒くさがりの役とは聞いていましたが、ここまでバリエーションを豊富に出してくるとは知らなかったので、面白かったです。

でも口では「面倒くせー」と繰り返しながらも、やる時はやる男なんですよね、照くんって。
ついに村で事件が起きた時も、「俺が解決してやんよ!」って啖呵を切りますし、実際二幕の照君は名推理の連発でしたし。
最後に、宇曾月一族が隠し続けてきた重大な謎を解いてしまい、「解けちまったよ、メンドくせー」と言いながら、一族、特に八菜さんにとって都合の悪い真相を明かすかどうか葛藤するところに、人間らしい温かみを感じました。
(余談ですが、照君、男性陣には当たりが強い一方で、八菜さんやトヨさんには優しいんですよね。
何度も頭を下げる八菜さんに「アンタは悪くない」と声をかけたり、事件のカギとなるスマホを直してくれたトヨさんに「ありがとう~、大変だったでしょ」と気遣ってくれたり)
一見愛想がなさそうな照君ですが、芯は優しい人間なんだろうなと思いました。

そして、そんな照君と万次郎のコンビが面白い!
万次郎は元から照君の事を親友だと思っているようですか、照君の方は全く意識していません。
でも、二人のテンポの良い会話がとっても心地良い。
極度な面倒くさがりの照君ですが、万次郎は底無しの明るさとコミュニケーション力の高さで、場を和ませてくれますし、照君と宇曾月家の間を繋いでくれる万次郎がいたからこそ、今回の事件は無事ハッピーエンドを迎えることができたんだろうなーと思います。
とっても息の合ったナイスコンビでした。

そして、物語に欠かせないのは兄貴の存在。
(まさか風間君が演じているとはビックリでしたが)
この兄貴が良い味を出してましたね。
弟を振り回すような奔放な一面があると思えば、八菜さんを気遣い、彼女の幸せを祈る優しい一面もあり。
ただ、最後の「公衆電話」のシーンは、結局謎のまま終わりましたね。
公衆電話での兄貴の電話を受け、照君は真相を語ることを決意するのですが、何とその公衆電話はずっと前から壊れていたとか。
巷では色んな説が流れているのですが、私自身は、照君が心の中の「兄」と言葉を交わすことで本心と向き合い、無意識に兄に背中を押してもらいたかったと解釈しています。
ただ、もしかしたら弟を心配した兄貴が使った、たった一夜限りの魔法だったかもしれません。
何せこの作品は「そこそこ本格ミステリ」ですから(笑)
色んな可能性があって当たり前なんですよね。
とにかく兄貴に関しては、今回「声」だけの出演でどんな人か全くつかめないまま終わりましたので、色々と想像力が膨らみました。

他にも、宇曾月一族の方々や刑事さん達も濃いキャラクターでしたね。
人の嘘を見抜いてしまうという八菜さんだったり、孫の元バレエダンサーの八介さんだったり、リアルコンピュータおばあちゃんのトヨさんだったり。
出る人全員漏れなく個性が強かったんですが、個人的に好きだったのは泥方刑事さん。
最初は照くんの事も敵対してたのに、照くんが尊敬する小説家の弟だとわかると、コロッと態度が変わるという調子の良いキャラです。
能力的にも被害者の死因をツバメのせいにしたりと、完全にポンコツなんですけど、こういうお調子者キャラって良い息抜きになりますよね。
また、元々芸人さんなだけあって、幕間のトークなど、場の空気の掴み方が非常に上手だなーと思いました。
全員何かしらクセが強いところはありましたが、人間味に溢れている人ばかりで、結局この舞台において、根っからの悪人は一人もいなかったんですよね。
振り返って見ると、照カミの世界ってすごく優しい世界観だったと思います。

■笑いを誘うメタ表現
好みは分かれると思いますが、この作品にはメタ表現が頻繁に出てきます。
(※メタ表現とは、創作キャラクター達が作品の世界から離れ、お客さんと同じ視点で物語を語ること)

例えば、
・「お前誰だよ?」⇒照君「主役様だよ!」
・「まだプロローグの途中ですよ!」⇒照君「長い!」
・泥方刑事「この後、この中の誰かが殺されるのだが……2幕の冒頭が初登場なんだけど、今全員が出ているから私も出てきちゃった」
・泥方刑事「ここから照くんは5分出てきませんが、決して休憩時間ではございません」
・八介「亡霊が出てきた時点で、ミステリーとして大分アウトだが、ギリギリセーフだ。何故ならこれはそこそこ本格ミステリだからだ!」
などなど。
今思いついたものを書き出しただけなので、他にももっと沢山表現があったと思います。
私自身はこういうくすっと笑えるシーンが好きでしたね。

その瞬間だけ登場人物がまるで現実世界に来てしまったような遊び心を感じて、笑いが止まりませんでした。
この作品だからこそ許されたお茶目な演出でした。

■照君のヘアースタイル七変化
照君は極度の面倒くさがりなのですが、面倒くささがマックスに達すると、髪の毛が一気に増えるという特殊な体質があります。
どうやらストレスが溜まってハゲると育毛剤とかカツラ被って面倒くさいので、逆に髪の毛が増えるみたいですね(笑)。
おかげで劇中では、色んな照様のヘアスタイルを堪能できます。
(※余談ですが、大道具に隠れていそいそとカツラを付け替える知念君も、すっごく可愛かったです)(←どこ見てるんだというツッコミは無しで)

最初髪の毛が爆発したのは、一幕ラストでついに村で死人が起きてしまった時。
急激に髪の毛が増えて、万次郎君も客席もビックリします(笑)
次に、二幕で爆発した照くんの髪を万次郎君が切ってくれるんですが、「良い感じで」と投げてしまったせいでおかっぱ頭に。
ちびまる子ちゃんみたいなコミカルなヘアスタイルなんですが、元の顔が知念様だからか、ただの美人でした。
おかげで、周りからも「美人が二人いる(※八菜さんと照君)」とか「僕好みじゃないですかー(by三島さん)」とか、見る者皆をメロメロにしていきます(笑)
照カミの世界でも「可愛いと言わせてあげてる」知念様……。強い……。

その後、照君は持ち前のハサミで自分の髪を切り、一瞬だけ通常照くんに戻るんですが、すぐに再びストレスが溜まってまたもや爆発する頭。
最終的には照くんのストレスが爆発して、スーパーサイヤ人みたいになったのには笑いました!
しかも、伸びきった髪で煙を払おうとしますし、便利な髪の毛だなーと思って見てました(笑)

余談ですが、ロゴの「カミってる」の部分も、実は髪の毛風のデザインになっていたんですよね。
その事実に気づいた時、小さな遊び心にくすっと笑ってしまいました。

■照君が踊る「呪いの舞」の美しさ
劇中では宇曾月家に代々伝わる「神楽(別名・呪いの舞)」が出てきます。
あまりにも最後の振りが難しすぎるので、舞が簡略化されてきたという経緯があるんですが、この舞の本来の振りが事件を引き起こす原因になるんですね。
そこで、真相を話す時に「実際に見てもらった方が速い」と照君が呪いの舞の振りを再現するんですが(そもそも一度しか見ていないのに完全に舞を覚えた照様もスゴすぎる)、さすが知念様。
一つ一つの所作がとっても美しかったですね。
和風テイストのしなやかな舞が続いたと思えば、急にテンポが上がって、軽やかなステップを踏み出す照様。
ダンスは元々知念様の得意分野なだけあって、レベルが非常に高かったですし、周りからも「キレッキレだわー」とか「うちの子スゴいでしょー」と絶賛されてて、愛されてるなーと思いました。
(余談ですが、呪いの舞を踊る為に眼鏡を外すんですが、そのすっぴんの顔も美しくて惚れ惚れしてました)

それから、作中ではこの最後の踊りが難しいと言われてるんですが、なんとバク転→バク宙→バク宙の三段コラボ!
そらー、凡人には出来ませんわ!
ですが、鮮やかに軽々とそのアクロバットを披露する照様……いや、知念様。
初めて見た時には感動しましたし、まるで妖精かのように鮮やかな技をこなす姿を見て、「あー、照くんは知念様の為に用意された役なんだなー」と思いました。

とにかく舞のシーンが大好きだったので、配信でも何度も繰り返して見てました。
この作品において、私が一番好きなシーンでした。
素晴らしい舞を披露して下さり、本当にありがとうございました!

――――――――

という訳で、以上、「照くん、カミってる!」の感想でした。

冒頭にも書きましたが、想像以上に面白かったです!
素晴らしい脚本、演出、周りの役者陣が揃っていて、この舞台が知念君の初主演作になって本当に良かったと感じています。
また、私はご縁があって、計3回見ることができたんですが(現場2回+配信1回)、回を重ねるごとに、知念君の発声や立ち居振る舞いがどんどん自然に馴染んでいって、短期間の公演といえど、知念君の成長スピードの速さを感じることができました。

何より私が良かったと思っているのは、最後の挨拶で知念君が
「楽しかったなー、僕も」
「この舞台が一発目で良かったな」
と言ってくれたこと!
これまで知念君が緊張していることは幾度となくインタビューなどで読んできましたし、
周りのキャストさんからも「去年無表情だったもんね」「知念さんが喋ってくれないって皆が言ってた」とか言われてましたし、
JUMPメンバーからも「知念が初舞台で緊張している」という話をずーっと聞いてきたので、今回の舞台に対して、知念君がどんな風に考えているのか、心のどこかでは気になってたんですよ。
でも、今回の舞台を楽しく前向きに過ごしてくれたことが表情や言葉から伝わってきて、知念君が本当に照カミに出会えて良かったなーと思っています。

そして、河原さんもおっしゃっていましたが、ぜひ「照カミ2」が見たいですね!!
まだまだ気になる要素は沢山ありますしね。
何せ照くんがどうしてこんな面倒くさいキャラクターになったのか、照くんのお兄さん(風間君は一体何者なのか)、照くんと万次郎の出会いは?とか。
今回きりで終わらせてしまうには非常にもったいないキャラクター達ですので、この縁が未来にも繋がっていくことを願っています。

とにもかくにも、知念くん初主演舞台本当にお疲れさまでした。
コロナで中止になった回数も多く、世間的にも大変な最中の舞台ではありましたが、カンパニーの仲間と協力しながら一生懸命この舞台を作り上げて、人々へ素晴らしい感動を届けてくれて、本当にありがとうございます。
今回の舞台で得られた経験が、知念君の次の活躍へ生きていきますように。

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